第2部 パネルディスカッション
「伝統か、進化か。― 名門校の過去・現在・未来 ―」
本日のテーマ
1.いま注目の生徒・若手卒業生
髙宮 第2部では、社会状況の変化が著しいなか、各名門校の「過去・現在・未来」の教育についてうかがいたいと思います。まずは講演のなかで注目の卒業生についての話もありましたが、もう少し詳しく紹介いただけますか。
野水 講演で触れていない方として、東京大学で生成AI関係の開発に携わり、在学中に「neoAI」という企業を立ち上げた千葉駿介さんという方がいます。一昨年の起業時はわずか数名だったスタッフが、現在は数十名の規模に急成長しており、今年の「Forbes JAPN 世界を変える30歳未満」に選ばれるなど、今後の活躍が注目される若手起業家の一人です。
髙宮 ちょうど先日、「neoAI」が当社に事業説明に来て、大変興味深い、おもしろそうなサービスを提供していらっしゃいました。続いて森上先生、自慢の卒業生についていかがでしょうか。
森上 いろいろな分野の方がいるのですが、皆さんがご存知のところで言えば、嵐の桜井翔君、EXILE(エグザイル)の岩田剛典君も普通部出身で、私の教え子でもあります。若手ということでは、2021年に当時、史上最年少で司法試験に合格した大月凜君は、先ほど紹介した目路はるか教室のOB講座で弁護士の方の話を聞いて司法に興味を持ち、労作展でも裁判の傍聴をもとに出展するなど学びを続け、大学1年時に司法試験に合格しています。医療関係者も多いのですが、普通部から医学部に行った志村祥瑚さんという方がいます。8歳のときに手品に興味を持って、医学部進学後も趣味で続けていて、在学中にラスベガスで行われたマジックの世界大会で優勝しました。その後は精神科医になったのですが、マジックは人の心の動きと関連するところがあるのか、東京2020五輪では新体操やカヌーのメンタルコーチを務めました。そんなユニークなお医者さんもいます。
髙宮 スポーツ界をはじめ、本当に幅広い分野で活躍されていますね。続いて杉山先生、若手の卒業生について紹介いただけますか。
杉山 先ほど講演で紹介したiGEMの世界大会で優勝した生徒は今、高3生なのですが、中学生の時にみずから植物研究会を立ち上げて、武蔵にあるいろいろな植物が昔からどう変わってきているのか一生懸命調べていました。やはりそうした好奇心が大事なのだと改めて思いました。それから先日テレビを観ていたら若い卒業生が出ていました。日本・イスラエル・パレスチナの学生間の交流や対話を目的とした団体の活動で、高橋篤史君が紹介されていました。「この活動で世界が平和になるところまでいかないことはわかっている。だけど未来への種をまきたいんだ」という話をしていて、武蔵生らしいなと思って聞いていました。彼は、本校の「REDプログラム」という、海外に目を向けたさまざまな取り組みの1期生でもあります。
2.世界を舞台に活躍するために
髙宮 世界を舞台に、グローバルに活躍するために欠かせないのが英語力です。英語教育、国際教育の取り組みについて教えていただけますか。
森上 普通部は中学校3学年の学校で、卒業生のほとんどは同じ日吉にある慶應義塾高等学校に進みます。中学・高校という言い方をすれば、中学時には週に5コマないし6コマの英語の授業があります。1年生は24人の少人数学級で、2・3年生は1クラス40人を2分割して、日本人とネイティブ教員が入れ替わりながら教えています。授業ではタブレットなども使いながら、エッセイライティング、プレゼンテーションなどにも取り組んでいます。
国際教育については、まずフィンランドとオーストラリアの学校と相互交流制度があり、お互いに授業や行事に参加します。また、慶應義塾全体としての、英国や米国のボーディングスクールへの派遣留学制度があります。これは慶應義塾が授業料を負担する留学制度で、かなり狭き門なのですが、昨年に続いて今年も普通部生が1名選ばれ、マサチューセッツのフェイスクールにこの9月から行っています。
髙宮 慶應義塾の留学派遣プログラムは、どこも著名なトップスクールばかりですね。今、欧米のトップスクールの授業料がとても高くなっていて、留学への大きな課題の一つとなっているのですが、慶應義塾の学内選抜をクリアすれば負担なく行けるということで、競争は激しいでしょうが大変狙い目だと思います。
杉山 私は武蔵の卒業生ですが、40数年ぶりに母校に戻ってきて驚いたことの一つが、英語の授業でした。英文和訳が中心だった昔の英語教育とはまったく違いますね。情報端末やオリジナルのスライド教材などを使って、「読む・書く・話す・聞く」の4技能を連動させながら、休む間もなく流れるように展開していきます。タブレットに自身のスピーキングを吹き込んで発音をチェックする、ノートPCで個別の学習状況を把握しながら授業にフィードバックさせるなど、授業のデジタル化も進んでいます。さらに先を進みたいという生徒には、先ほど触れた「REDプログラム」や、各種の英語資格対策講座、あるいは高大連携による大学講座受講といった学習機会もあります。海外に留学するには一定の英語レベルをクリアする必要があるため、生徒の進路希望をかなえるということからも対応できる体制をとっています。
グローバルという視点では、本校では中3で第二外国語が必修科目としてあります。ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語から選択し、高1以降に選択科目として学びを続け、希望者は海外の提携校での最大2か月の研修制度もあります。「思い切って外へ、もっと先へ」というマインドを育て、後押ししていきたいと思っているのですが、高額な費用がかかるのは本当に悩ましいところです。直接海外大学への進学を希望する生徒には奨学金を得るための指導も行っていますが、武蔵学園としても初年度の学費について、毎年総額500万円を複数の生徒に支給しています。
髙宮 第二外国語の授業を提供するにはかなりの労力が必要です。どのような思いで取り組まれているのですか。
杉山 語学を学ぶということは、単に言語を習得するということではなく、文化を学ぶということだと思います。今は機器を使えば翻訳してくれますが、直接ことばを交わせば親近感も生まれます。中3生を見ていると、文化交流の効果もあることがよくわかります。
髙宮 続いて野水先生いかがでしょうか。
野水 杉山先生がおっしゃられたように、以前と比べて英語教育はずいぶん変わりました。私が学生のころはリーディングばかりで、使うことはあまり意識されていなかったように思います。英語の授業を見学して、生徒のモチベーションを高めながら4技能を伸ばしていく手法に感心しました。中2時に全員参加の英語のスピーチコンテストがあるのですが、生徒たちが思い思いのテーマで堂々と話しているのを聞き、何のために英語を学び、使うのかという動機づけがやはり大事なだと思いました。本校の英語教育も大変充実しているように感じます。一方で、これまで国際関連のプログラムがそう多くなかったこともあり、近年非常に力を入れています。今ではサマープログラムにも50人以上が参加するようになりました。国内にいてもグローバル体験ができるよう、交換留学制度を新設することなども検討しているところです。
髙宮 アメリカのジョンF・ケネディが卒業した有名なボーディングスクールの説明会に参加したことがあるのですが、高層ビルの上階にある会場に向かうエレベーター前に開成の学ランを着た多くの生徒たちがいました。開成も留学に興味がある生徒が多いのだなと思いました。
3.高度情報化社会で突き抜けるには
髙宮 グローバリゼーションとともに、もう一つ今、子どもたちが直面しているのが ICTの急激な進化です。来年1月の大学入学共通テストから新たに「情報」科目も加わります。スマートフォンやタブレットのような新しいテクノロジー、さらに「ChatGPT」などの生成AIとどう向き合っていくのか、SNSへの対応を含めてお聞かせください。
杉山 まずICT環境は、コロナ禍により多くの学校で大きく変わったと思います。本校でも全学年の授業でタブレットを活用しています。「情報」も、必修・選択で対応しています。中学生は技術の授業でICTを取り上げますし、さまざまな機器を使って課題研究や発表をしています。AIはもうシャットアウトすることは困難で、どう賢くつき合うかに焦点は移っているように思います。本校では実験的措置として、「ICT活用ガイド」を制作し、その内容を学ばせたうえで、運転免許のように試験をしてから、合格者にタブレットを渡しています。レポートを書かせる機会も多く、生徒も部分的にAIを利用しようと思えばいくらでも使えますが、それでは自身のためになりません。この点について、AIの最先端にいる情報工学者の松原仁さんが後輩への講演でこのようなことを言っていました。一つ目は、AIというのはT型フォードが登場したモータリゼーションの時と同じでもう流れは変えられない、あとはどうルールを作るか、どうAIを使いこなすかを考えなければいけない。二つ目は、そういう時代だからこそ、自ら調べ、自ら考える力が本当に大事になるということ。そして三つ目に彼が言ったのは、AIは責任を取らないし、取れない、それをよく理解してつき合っていかなければならないと。そのとおりだなと思いました。
テーマにある「突き抜ける」ということでは、グローバル、AI、ICTなどの素養を持っていることは大前提として、失敗を恐れないマインドセットが大事だと感じています。これは日本の課題でもあって、教員も生徒も失敗してはいけないというマインドが強すぎるとどんどん臆病になってしまう。株式会社リクシルCEOの瀬戸欣哉さんが後輩に語ったくれたことなのですが、「失敗なんてないんだよ」と。うまくいかない時に、その理由を徹底的に考えぬいたのであれば全部成功に変わるんだと。人は皆、助手席に座りたがるけれど、運転することはとても楽しいことで、武蔵という学校はドライバーズシートに座り続ける勇気を私にくれた学校なんだと言ってくれていました。「突き抜ける」ためには、そうした意識が必要だと改めて思いました。
髙宮 AIも、対話型の「ChatGPT」、文章や画像などを自動製作する「生成AI」とあっという間に進化して、かつて禁止していた学校も今はどうつき合っていくかに舵を切ってきたように思います。
野水 開成でも、AIを抑え込むのはもう難しいと考えていて、どう使っていくかという方向に進んでいます。質問の入れ方によって生成AIの答えも違ってくるので、そうしたマイナス面の特性を理解させるとか、逆に和文英訳ではかなり高精度に添削してくれるので、そうした使い方を奨励するなど、利用の仕方を分けて考えています。やはりAIを使いこなすことが大事で、生徒たちには新しい独創性を持って先端的なものを作り出すというような観点で、生成AIとつき合ってもらえたらと思っています。
2年前から中1にiPadを貸与して、来年の4月からは全学年が何らかの形で端末を持つことになります。先生方が使い方を紹介するのですが、実は生徒のほうが進んでいる面もあります。学校の食堂の券売機の行列を解消するため、スマートフォンによる電子決済で事前に食券を購入するシステムを生徒がプログラミングして提案してきました。システムを作りあげた生徒の卒業後のメンテナンスはどうするのかと聞くと、自分たちの卒業後もメンテナンスが続くよう、IT会社と交渉してきて、食堂の運営会社にも説明して、この9月から運用が始まりました。いつの間にか生徒たちのほうがどんどん技術を習得して、新たな社会を作り始めていることを実感しました。
森上 普通部でも、コロナを機に全員がタブレットを所持して学びを進める形をとっています。技術・数学・理科など、比較的タブレットと親和性が高い教科だけではなく、英語でも会話を録画するとか、体育でもフォームを確認するとか、さまざまな場面で活用しています。SNSについては、警視庁やSNS対策の専門家の方に来ていただいて 中1生対象のワークショップを開いたり、上級生についても教員によるワークショップを定期的に行ったりしていますが、なかなか難しい問題だなという印象はあります。AIについては特に禁止も推奨もしていませんが、その特性、あるいは著作権の問題などはきちんと考えて利用するよう伝えています。一方、活用例としては、慶應義塾全体として AI高度プログラミングコンソーシアムという組織があります。そこで毎年数回、慶應の小中高校生を対象にワークショップを行っており、初級から上級までのプログラミング講座、ロボット制御、データサイエンスなどがテーマになっています。そうした機会を通じて、生徒たちはどんどん力を伸ばしていっています。生徒たちのほうが我々大人よりもはるかに柔軟性やデジタルへの対応力が高いことを感じます。教員は各学問領域の基礎を習得してもらうことに力を入れて、イノベーションを発揮する機会は彼らに任せるという考え方もあるように思います。最先端の知識よりも大事なのは、学び続ける姿勢を身につけることだとも思います。
髙宮 普通部は携帯電話の持ち込みを禁止していましたが、認める方向に進んでいると伺いました。どのような事情があったのでしょうか。
森上 自然災害など緊急時の利用も考えて持ち込みを認めるという方向は決まったのですが、校内や通学中の利用方法をどういうルールにするかなど、生徒たちと話し合いをしているところです。ほとんどの生徒は賛成なのですが、少数ながら、友だちとの会話のほうが大事なのでスマホは禁止にしてほしいという声もあります。生徒の意見も聞きながら、使い方を考えている状況です。
4.個性を伸ばし、多様性を育む仕組みとは
髙宮 ここまでお聞きして、現在の社会状況にしっかり目を向けながら、3校の名門校それぞれが本質的で必要な教育について模索されていることがわかりました。先生方もそれぞれの母校の卒業生で、これまで培ってきた学校文化があって今があるということも感じているのではと思います。先生方が在校していた当時から変わったところ、変わっていないところについて、印象をお聞かせください。
野水 わたしは約50年前に母校を卒業しました。当時は個性的な先生が多かったように思います。化学が好きで理系のクラブに入っていたのですが、ちょうど4大公害が社会問題化している時期で、背景を社会の先生がていねいに教えてくれたことが、その後の自身の生き方に影響したように思います。変わらないところとして、現在の開成でもさまざまな個性を持った教員がたくさんおり、興味のあるテーマを深く掘り下げた授業を展開してくれています。教員自身がおもしろいと思っているからこそ、それが生徒にも伝わるところがあって、時に大学での研究にもつながるような授業もしています。そうした姿勢が、生徒の個性を伸ばす、あるいは多様性を育むことにつながっているのではないかと思っています。
髙宮 ある国立大学の学長にインタビューする機会があり、開成出身と聞いていたのでインタビュー後に運動会の棒倒しの話をしたら、大変うれしそうに当時の思い出を語ってくれました。学校文化は卒業から何年たっても染みついているものなんだなと感じたことを思い出しました。
森上 当時の思い出として記憶に残っていて現在も続いているものとしては、授業では理科のカエルの解剖ですね。1人1匹生きているカエルを与えられて、生体反応を見て、解剖をして、最後に神経標本や骨格標本を作ります。今はなぜ命を奪ってまで実験を行うのか、意図をていねいに説明しますが、当時はいきなり解剖を指示されて度肝を抜かれたのを覚えています。意図は昔と変わってはいませんが、事前のブリーフィングやタブレットでの録画など、進め方は大きく変わってきたように感じます。行事では、やはり労作展です。自分としてはまあまあできたかなと思っていたのが、周りのレベルがすごく高くてなかなか提出できず、友だちがみんな帰ってからこっそり出した記憶があります。来年はがんばろう、そう思いました。労作展は、友だちの作品から大きな刺激を受け、先輩の作品にあこがれます。そうしたあこがれの連鎖が労作展の質を担保してきたのかなと思います。友だちや先輩のすごい作品を見て、次は自分もがんばろうと思う。そういうカルチャーが受け継がれているのが労作展だと思っています。
杉山 学校文化は一朝一夕にできるものではなくて、たとえるなら秘伝のタレのようなものかもしれません。ベースにあるものに、真剣に考え抜いたことを継ぎ足し、継ぎ足して今がある。今回参加されている学校にはみな、秘伝のタレのような学校文化があるように思います。私は10代を武蔵で過ごして43年ぶりにまた武蔵に戻ってきました。変わっていないなという思いと、でも変わったなという感覚、どちらもあります。本質的な文化はまったく変わっていません。みんなが自由で伸び伸びと学び、ともに過ごす環境は40年前とまったく変わりません。学問がどんと柱として中心にあるのも同じです。ただ、先ほど野水先生もおっしゃっていましたが、まじめな先生が多くなりました。昔は、1年間、源氏物語だけやる先生とか、1年間、徒然草だけ、1年間、自由について徹底的に議論する、そういう授業がありました。今は体系的に学ぶ仕組みが整っています。行事も三大行事の記念祭、体育祭、 強歩大会は運営スタイルを含めてまったく変わっていません。ただ昔はサボっている生徒もたくさんいました(笑)。生徒も先生もまじめになりました。ほんの少し寂しいような気もしますが、良い方向に進んでいることは間違いありません。
5.次の100年、150年に向けて
髙宮 最後に先生方に、3校の未来がどうあるべきか、 どうあってほしいかお話しいただければと思います。
森上 先日、新聞を読んでいたら、定員割れしている私立大学が6割という記事がありました。少子化もあって私学にとっては厳しい時代だと思っています。普通部では2008年から外部評価委員会を設け、日々の教育活動について評価してもらっています。先日、その委員会で、慶應義塾大学に入ってくる学生も減少しかねないし、普通部も同じ道をたどる可能性があるので教育内容の刷新も検討したほうがいい、そんな指摘をいただきました。その可能性はないわけではない。ですから私たちも、「必要な対応は講じつつ、でも守るべきところはしっかり守りながら学校運営をしていきたい」と考えています。では守るべきことは何かというと、もちろん慶應義塾の建学の精神「独立自尊」、そして先ほどから申し上げている普通部の労作教育だと思っています。新たな試みとしては演説会があります。自分の考えをきちんと他人に分かるよう場を設けスピーチしてもらいます。そして「普通学」、言い替えるとリベラルアーツの講座も今年度より開始しました。この秋からチューター制度も導入し、普通部OBの大学生に来校してもらい、普通部生からのさまざまな質問に答えてもらおうというものです。
私たち教員の役目は、学びに対する意欲の火を灯すことだと思っています。普通部生の心に火をつけ、 彼らを学びの世界に巻き込んでいく。いろいろな仕掛けや工夫をこらしながら、 彼らの学びを深めることに力を尽くしていく学校でありたい、そう思っています。
杉山 武蔵は創立100年ということで「新生武蔵」という旗を掲げ、武蔵の良さ、強みを生かしながら進化しようと、三つの進化ポイントを明確にしました。「グローバル」「進路希望」「アナログとデジタルの融合」。これに力を注いでいきます。そしてミッションにあるように、独創的で柔軟な人間を育てていくこと。同調圧力にただ押されるのではなく、自分の意見をしっかり持ち、みんなをうまく巻き込んでいく。信頼され、尊敬されるリーダーを育て、「武蔵の卒業生ってちょっと変わっているけどいいよね」と言われるようになればうれしく思います。
野水 私は名古屋大学で国際交流に長く携わり、交換留学のプログラムを動かしてきました。1990年代にはアメリカへの留学生は日本人が一番多かった時期もありましたが、現在は日本の存在感は非常に薄くなっています。やはり若い人たちにはもっともっと海外で活躍してもらいたいという思いがあります。開成の生徒には、どんどん海外に飛び出てリーダーシップを発揮できる人材になってほしいと思っています。海外大学に直接入学するだけではなく、国内の大学に進学後に留学する道ももちろんあります。新しい高校校舎が完成し、新しい時代を切り拓くベースができました。今後も社会で活躍する人材を数多く輩出していきたいと考えています。
髙宮 本日お集まりの皆さんにメッセージをいただければと思います。
森上 もし小学校高学年のご子息がいらっしゃるのであれば、今、受験に向けての勉強が佳境を迎えているのかもしれません。小学生の時期に、適切な方法で集中的に学習することはとても良いことだと私は思っています。しかし、時にはもっと根っこに立ち返って、「なんで勉強しないといけないの?」のような、テストの点数につながらないようなことも親子で話していただくことも良いのではと思ったりもします。今後もさらにご子息の学びが深まりますことを祈念しております。
杉山 中学受験のフォーラムということで、お子さんを含めて中学受験に向けて今、一生懸命にがんばっておられる人もいるのではと思います。私からは三つあります。一つは、好奇心。すべての学びは好奇心が重要で、「なぜだろう」「おもしろいな」という気持ちを持つことがとても大事なので、その芽はずっと持ち続けてもらいたいと思います。次に、向上心。もう少し上手になりたい、できるようになりたいという気持ちを大切に育ててください。最後に、会話。塾などもあって家族で晩御飯を食べられない時もあるかもしれませんが、一緒に食べられる時には、「今日こんなことがあったよ」と、お子さんが自然に、自由に言えるような雰囲気をぜひ作ってあげてください。うまくいくときもあればうまくいかないときもあると思いますが、一喜一憂せず、お子さんの好奇心、向上心を大事にしながら、笑顔のたえない空間づくりをぜひ心がけてください。
野水 勉強しなさいと強く言っても逆効果になります。ではどうやってお子さんに勉強してもらうかというと、やはりいろいろなことに興味を持って、好奇心を育てる工夫をしていただくことがとても大事だと思います。そのためには自然の中で遊ぶこともいいかもしれませんし、博物館に出かけて行ってこんなおもしろいことがあるんだということに気づかせてあげることも効果的かもしれません。慶應さんも武蔵さんも、もちろんわが校も、入学後には伸び伸びと学べる環境が待っているので、それをぜひ楽しみにしていただきながら、あまり無理をしないように気をつけながらがんばっていただけると良いのかなと思います。
髙宮 大変貴重なお話をありがとうございました。